ひと昔前は、学会ついでに観光するのが学者の醍醐味、みたいなところがあった。
私の分野だと慎ましやかなものだけど、夫は理系なので、学会のお知らせメールのリンクを開くと、華やかなビーチの写真がメインだったりして、学会ツーリズムだなあと苦々しくも、ちょっと羨ましかったりしたものだ。
最近は研究費の管理が厳しいし、世情的にも私事旅行の寄り道は難しいのではないか。
しかしながら、私が所属している某学会、今年の開催地は奈良・天理だった。
私は早々に、今回はぜんぶ私費で参加し、堂々と夫同伴で観光しよう、と決めていた。
年明けすぐにホテルを予約して、飛行機もバーゲンのタイミングで入手できた。
退職して、じつは学会参加もやめようかと思ったけれど、金額的にも気分的にも、せっかくの機会を逃すのは惜しいという気持ちが勝った。
それで、9月半ばに4泊5日の日程で、奈良・天理への観光&学会旅行となったのだ。
◯ホテル
このホテルがいいのは、料金が人数ではなく部屋当たりでの計算になる点で、今回は夫と二人だったので、なかなか安く泊まれた。
駅からはタクシーで15分ほどとちょっと遠いけれど、学会会場の大学からは近いし、なんといっても今回の巡礼(後述)の目的地のひとつ、石上神宮にも近いのがすばらしい。
ホテルの部屋の大きな窓からは、一面に広がる水田と遠く向こうに連なる山々のパノラマ。
ロビーが広くて、お茶やコーヒーが24時間飲み放題、隣接の売店で買ってきた朝ごはんをロビーで食べる、というのを4泊くり返した。
でも、なにより印象に残ったのが、ホテルや売店の店員さんがやたらと親切だったこと。
観光地というのもあるかもしれないけれど、だとしても、普通に期待するより2〜3割増しな親切ぐあいで、いったいどうしてだろう?と、夫と訝しむほど。
ほんと、どうしてだろう?
◯法隆寺
なぜなら今回、個人的な裏テーマは『日出処の天子』の聖地巡礼だから(キリッ)。
天気予報で連日30℃超だったので、ギリギリまでキャンセルしようか迷ったけれど、ガイドの方とのやり取りでいろいろ配慮していただいたおかげもあって、当日はぶじ時間どおりに待ち合わせ場所に到着。
すると、担当ガイドの方が「Willkommen(ようこそ)!」とドイツ語で出迎えてくれる。
なんと、ガイドさんは現在ドイツ語を勉強中とのこと、そこから英・独・日、三ヶ国語が入り乱れる、面白&ゆかしき知識満載の圧巻なガイドツアーとなった。
予習として梅原猛『隠された十字架』を読んだ私には、門の柱からして既に感慨深い。
30年前に一度来たことがあるはずだけど、総じて驚くほど記憶になく、すべてが新鮮だ。
なお、「
大宝蔵院」は1998年完成なので、こちらは初訪問となる。
教科書でおなじみの聖徳太子像や、これまた梅原本のおかげで感慨深い「夢違観音」など、展示がたいへん充実していたのに加えて、冷房がバッチリ効いていたおかげで、ありがたさ5割増しだった。
それにしても、こんなにすばらしいガイドが無料なんて、あらためてほんとうにすごい。
ホテルもそうだったけど、これが奈良のホスピタリティということなのだろうか。
恐るべし、奈良。
さすが「
せんとさん」(実物をみると、もはや「君」呼びはできない)を生んだ土地だ。
◯石上神宮
学会初日のプログラムは午後からだったので、午前中にホテル隣接施設でレンタルサイクルを借りて、10分ほどの距離にある『日出処』の巡礼地・
石上神宮にひとりでお参りした。
午前10時前なのに信じがたいほど暑い、快晴の日。
でも、神宮の森に足を踏み入れると、とたんに空気が変わって、ふっと肩の力が抜ける。
中に進むと出迎えてくれるのがおしゃれな鶏たちで、その高貴な姿にしばし見とれる。
拝殿では祈祷が行われていて、人もまばらだったので、しばらくのあいだ耳を傾けた。
それから授与所でいろいろなグッズを眺めて楽しんだり。
摂社にもお参りした後、遊歩道を少し散策。
池のほとりに歌碑があって、なんとも素敵な雰囲気、こんな場所に歌碑を作ってもらえたら嬉しいだろうなあ、と思いながら進むと、またしてもおしゃれな鶏たちの一味が。
小屋からは少し離れているので、なんだか野性味も感じられて、危険な香りが漂う鶏たちをそっと見守る。
どれくらいの時間を過ごしただろうか、暑さも忘れ、自分がどこにいるのかちょっとわからなくなるような、そんなひとときだった。
◯そして、学会
学会最終日が移動日で欠席になるので、そのぶん2日めは朝から夜まで、ザ・学会な一日を過ごした。
昨年の学会は欠席、一昨年はオンライン発表で、他の人の発表を聞く余裕もなかった。
今年は自分の発表がないし、聴きたい発表をあちこち聴きに行ったり、懐かしい友人知人と立ち話したり、ひさしぶりに学会をどっぷり満喫した感がある。
お昼どきには、知り合いの研究者とその学生さんのテーブルに混ぜてもらった。
そこで私が「いやあ、自分の発表がない学会って、最高ですよね!」と言ったら、ひとりの学生さんに「え、そうですか?僕はちょっと後ろめたいです」と返されて、そうか、それが正しい研究者の姿だよな、あ゛〜だから私はダメなんだ・・・と思ったりして、そういうのも含めて、いかにも学会らしく、楽しかった。
楽しかったけど、次に参加するときには、やっぱりちょっと発表したいかも、と思わなくもない。
テーマは何にしようかな。
来年の開催地は東京だからパスだけど、再来年、高野山とかが会場にならないかな・・・
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| 上3枚は石上神宮、左下は学会会場、右下はせんとさんのご友人(?) |
ガッカイという名の宴に跋扈するあやかしまやかし楽しむがよし