2024/02/17

シマエナガ商法

急にある生き物がチヤホヤされることがある。

私が学生の頃は「クリオネ」だった。
何を隠そう、私が初めて持った携帯電話はクリオネのイラスト入りで、会うひとごとに自慢したものだ。

目下のところ、北海道のおみやげ市場を席巻しているのは「シマエナガ」である。
白くて小さくてふわふわな、小首をかしげたアイツが至るところでこちらを見ている。
数年前から徐々におみやげ売り場を侵食し始め、私の勤める大学でも、ふと気づけば一連のシマエナガグッズを展開している。

たしかにヤツらはかわいい。
かわいいけど、あざとい、という印象は否めない。
でも、あざといなと思いつつも、つい大学のロゴ入りシマエナガ付箋に手が伸びてしまう。
シマエナガ商法だ。
わかっていながら、手を出さずにいられない。

・・・

数日前、変な時間に目が覚めてしまい、ネットをさまよっていると、先日切り抜いた「辰さん」の先生によるワークショップのお知らせが目に入る。
今回のワークショップは、あらかじめ切り抜かれた真鍮板を叩いて仕上げるというもの。
その真鍮板の「カタチ」のなかに、アイツがいた。

朝4時に人生初のインスタDMを送ってワークショップに申し込み、地下鉄とバスを乗り継いで、初めて訪れるカフェへ。
まずは美味しく健康的なランチをいただいて、身も心も準備万端、いざ作業台に向かう。

前回は糸鋸と格闘してヘロヘロになったけど、今回はタガネで叩くだけだし簡単かな、と思っていたら、いやいやどうして、なかなか奥深い。
角度や強さを調整しながら、無垢な瞳で見つめるアイツをトントン叩く背徳感。

槌目をつけていくと板がどんどん反っていくので、それを裏から木槌で叩いて平らにする。
ひととおりいい感じで槌目がついたところで、真ん中がくぼんだ木型を使って、おなかまわりの丸みを出してゆく。

今回はブローチに仕上げてもらって、プレゼントする母のイニシャルも入れてもらう。
(ちなみに母は、昨年札幌に遊びに来る予定があり、ホテルの希望を聞いたら、「シマエナガルームがいい!」と言うので予約したものの、けっきょくコロナでキャンセルになったのだった。)

こうして出来上がったアイツことシマエナガちゃんは、質感、重み、そして無垢な瞳、どれをとってもカワイイとしか言えない。
いやほんと、かわいすぎる。

ワックスをかけて、つやつやになったアイツ

辰さんと並んでツーショット

森の仲間たち





朝まだき積もれる雪はふかふかと心に棲まう子ら飛び跳ねる


2024/02/09

すべてがFになる

年明けに受けた健康診断の結果が届いた。

総合判定は「F」。これまではずっと「A」で、今年も左の聴力の「F」を除けばすべてA判定なのだけれど、総合すると、F判定ということになってしまうらしい。

私は、1年前に「聴神経腫瘍」の手術を受けた。
聴神経腫瘍は良性の脳腫瘍で、私が診断を受けたのは2022年8月8日。
診断から手術、そして退院後の生活まで、くわしい記録を残すことも考えたけれど、手術の経緯に対する批判・不満を書かざるを得なくなりそうなので、詳細を記すことはやめておく。
それでも、健康診断では毎年A判定、出産の経験もなく、他に大きな病気もしたことがない私と家族にとって、手術と入院は一大ライフイベントとなったし、今とこれからの私は、この経験なしには語れないと思う。

聴神経腫瘍の治療には、大きく分けて、経過観察、ガンマナイフ、手術の3つがある。
私の場合、見つかった時点で3cm超の大きな腫瘍だったため、医師の見解としても自分で調べた限りでも、手術一択だった。
診断を受けた時、聴力が低下している感じは主観的にはなかったけれど、腫瘍のある左側を検査してみると、聞こえはすでにかなり悪くなっていて、手術後にはおそらく聴力を失うことになるだろう、ということは事前に分かっていた。
そして、手術で腫瘍が摘出された後、じっさい左側がほぼ聴こえなくなり、現在に至る。

後遺症として心配されていた顔面神経麻痺はほとんどなく、舌の左側がしびれる感じがまだするものの、こちらは徐々に回復しつつあるのを感じる。
でも、聴力の方は、この先戻る見込みはなく、補聴器もあまり役にたたないらしい。

だから、私がこれから受ける健康診断は、ずっとF判定ということになる。
いや、だからどう、というわけではない。ショックと言えば、過去の記録と比べて、2019年から体重が3キロ増えていることのほうが、よっぽどショックではある。

それでも、健康診断の結果通知の表紙に書かれた「あなたの総合判定は【F】 通院継続が必要です」という文言に、ちょっとハッとしてしまった。




病窓に始まる暮らしひとつあり白いロザリオ小さな天使