2014/05/09

異邦人の目

この街に引っ越してきて、気づいたことがいくつかある。

自転車のカギを2個つけているのを、あまり見ない(札幌では、そうしないと盗まれる)。昼間でも雨戸を閉めている家が、やたらと多い(札幌では、雨戸を閉める家は珍しい、と思う)。桜が、いがいと長く咲く(札幌では、最初から葉桜になっている)。桜のあとに、いろいろな花が咲く(そのかわり、ライラックを見ない)。

碁盤の目になっていない街は、ひとつ違う通りに入ると、めざす場所からどんどん離れてしまう気がして、引っ越してからしばらくは、いつどこを歩いていても、なんとなく緊張していた。グーグルマップでよく確認して、念のために地図も持って自転車に乗ると、目に入る風景を全部処理しようとして、頭がヒートアップする。そんなとき、ふと目線が静かな団地の合間や、誰もいない小さな公園に吸いこまれて、ああ、この感じ、まるで外国にいるようだ。

一週間の予定が決まり、電車の乗り換えルートが決まり、いつも行くスーパーが決まり、休みの日に出かける公園が決まって、気がつくと、外で緊張しなくなっている。ようやく「異国」暮らしにも慣れたのだろう。

と、思っていたのだけれど、この前の日曜日、公園からミスドに行った帰りに、ひとりで買い物をした後で、道に迷ってしまった。辺りはどんどん暗くなり、見たことがあるような無いような通りでは、コンビニもファミレスもあてにならない。自転車をてきとうに走らせれば、半月手前の月は、見上げるたびに場所を変える。軽く途方にくれる。

一度行ったことのある税務署の行先表示を見つけて、思いがけない方向から見覚えのある通りに出たところで、ホッとするのと同時に、両手がつめたくなっているのに気づく。空腹と寒さのせいだけではない。

やっぱり、まだ私は「異国」にいるのだ。




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